遺伝:あなたの祖先はどこから来たのか
Nature Communications
2014年4月30日
遺伝的データを用いてヒトの地理的起源を正確に予測する方法について報告する論文が掲載される。これは、生物学的情報を利用して、対象者のDNAの起源地を世界規模で正確に予測する方法であり、高精度の遺伝的祖先検査が実現する可能性が浮上した。
生物学では、多くの生物の起源集団を特定するための手段として遺伝情報が用いられている。ヒトの場合には、遺伝情報を用いて、ヒトが初めてアジアに移動した出アフリカという事象などの歴史上の移動や現代のヨーロッパ人の起源に関する推論が行われてきた。しかし、現代を生きる人々の発祥地を遺伝情報によって特定する研究は、あまり成功していない。実際、生物地理学的なアルゴリズムを用いることで、ヨーロッパ内で700キロメートルの精度が達成されたが、その他の地域については、精度が低いことが判明している。
今回、Eran Elhaikたちは、ジェノグラフィック・プロジェクトのボランティア参加者が匿名で提供した正確な遺伝情報と地理情報を用いて、Geographical Population Structure(GPS)のアルゴリズムを開発した。Elhaikたちは、3組のデータセットを用いた研究で、GPSによって全世界の人々の83%の発祥地を正確に推定できることを明らかにした。また、200名のサルジニア人を対象としてGPSを検証したところ、全体の4分の1については、現在居住している村が発祥の地であり、残りの大部分の人々の発祥地が、居住村から50キロメートル以内にあることが明らかになった。Elhaikたちは、この方法が、全世界の人々の生物地理学的特性について、その発祥の国、場合によっては村まで特定できるだけの精度と威力を有し、それが、家系調査に役立ち、さらには、集団の大きさと遺伝的多様性、環境によってヒトの集団構造が形作られた過程に関する新たな考え方を促進する可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms4513
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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