Research Press Release
先端バイオ燃料で二酸化炭素排出量を削減できるのか
Nature Climate Change
2014年4月21日
米国でのトウモロコシによるバイオ燃料生産が、土壌炭素の減少を引き起こし、二酸化炭素(CO2)排出量の60%削減義務を達成できなくなる可能性があることを指摘する論文が、今週のオンライン版に掲載される。先端バイオ燃料とは、収穫された穀粒ではなく、茎や葉などの作物残渣を用いて生産されるバイオ燃料で、食料生産とバイオ燃料生産の重大なトレードオフを回避できる。しかし、ガソリンの代わりにバイオ燃料を用いた場合に、CO2排出量を十分に削減できるのかどうかは明確になっていない。
バイオ燃料生産によるCO2排出量の測定は、通常、ライフサイクル・アセスメントの方法を用いて行われるが、これまで土壌炭素は考慮されていなかった。作物残渣を除去すると、土壌の炭素吸収量が減り、その結果として土壌炭素貯蔵量が減少する可能性がある。今回、米国のコーンベルト(トウモロコシ栽培地域)全体におけるトウモロコシ残渣の除去によるCO2排出量の推定研究が行われ、土壌炭素の減少によって、バイオ燃料生産量1メガジュール当たり平均50~70グラムのCO2が追加的に排出されるという結果が示された。
この論文で、Adam Liskaたちは、土壌管理の改善によって土壌炭素の減少分を補てんしない限り、ライフサイクル全体でのCO2排出量が、2007年の米国エネルギー自給・安全保障法で義務付けられた60%削減を達成できないという見解を示している。
doi:10.1038/nclimate2187
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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