【がん】非分裂性のがん細胞が薬物標的
Nature Communications
2014年2月19日
非分裂性の大腸がん細胞は、化学療法薬に耐性を示すことが多いが、この大腸がん細胞を選択的に標的とする薬物が同定された。この薬物は、マウスに有効なことも明らかになったが、この成果は、これと類似した治療法をヒトの大腸がん向けに開発する上で役立つかもしれない。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
腫瘍内の血管新生と栄養の乏しい領域には、静止細胞(あるいは非分裂性細胞)が存在していることが多い。この静止細胞は、従来の化学療法薬に耐性を示すことが多く、治療せずに放置すると、二次性腫瘍の増殖が起こることがある。今回、Stig Linderたちは、腫瘍の三次元的性質を再現するために、実験室内で大腸がん細胞を球状に培養し、1万点の化合物を用いて、この細胞に作用する化合物のスクリーニングを行った。それにより同定された候補がVLX600で、球状体の中央部にある細胞の増殖を阻害し、細胞死を誘導した。この領域は、栄養に乏しい可能性が高く、腫瘍の中心部の状態と似ている。Linderたちは、VLX600ががん細胞での代謝を変え、代謝活性を高めて、十分な栄養供給がないと細胞死が起こるようにすることを明らかにした。また、マウスを用いた実験では、VLX600が、大腸がんの治療薬に用いられるイリノテカンと協働して作用し、腫瘍の増殖を抑制することも判明した。
今回の研究結果は、VLX600のさらなる研究に道を開くものであり、大腸がんの治療への利用に期待が膨らんでいる。
doi:10.1038/ncomms4295
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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