【進化】熱帯雨林の狩猟採集民に対する農業の影響
Nature Communications
2014年2月5日
アフリカにおいて農耕民と農耕民が持ち込んだ農業が熱帯雨林の狩猟採集民に与えた影響を調べた研究の結果を報告する論文が掲載される。今回の研究は、農業が熱帯雨林の狩猟採集民と農耕民の集団に与えた影響を明らかにし、この2つの集団の間で最近起こった遺伝的交換を明確に示している。
アフリカ中西部では、今からおよそ5000年前に農業が出現し、それによって、サハラ以南のアフリカ全体で、運動量の少ない農耕型生活様式の拡大が始まった。しかし、一部の熱帯雨林の狩猟採集民集団は、移動集団の生活を続けた。農業文化と技術の拡散が熱帯雨林の狩猟採集民の人口統計学的歴史に及ぼした影響の全容は、ほとんど解明されないままになっている。
今回、Lluis Quintana-Murciたちは、サハラ以南のアフリカにおいて、現代の熱帯雨林の狩猟採集民と農耕民のゲノム規模の一塩基多型データを生成し、この2つの集団について、遺伝的多様性と集団間の進化的関係を調べた。その結果、この2集団間の遺伝子流動が、過去1000年間に限られていたことが判明した。このことは、2集団間での当初の相互作用が、社会経済的発想(例えば、道具や植物栽培技術)の交換に限定されていたことを示唆している。さらに、今回明らかになったゲノムの特徴は、アフリカでの農耕民集団の増加が農業の出現の前から起こっており、従って、農耕民の増加は農業の出現によるものとはいえないことを示唆している。
doi:10.1038/ncomms4163
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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