Research Press Release
【材料科学】自然から着想した超強靭ガラス
Nature Communications
2014年1月29日
ガラスのスライドに溝を彫り込むことで、ガラスの靭性が大きく向上することが分かった。この方法は、自然に存在する軟体動物の殻や歯のエナメル質に存在する弱い界面から発想を得ている。さらに、この溝に軟質ポリマーを浸潤させると溝を彫り込んでいない試料と比べて、靭性が200倍向上した。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
ガラスは、もろい材料として悪名が高いため、靭性を高めて、用途を広げるための新技術の模索が続いている。今回、Francois Barthelatの研究グループは、歯のエナメル質や真珠層といった自然に存在する材料における弱い界面(周囲の材質より弱い内層の「端部」)の分布を系統的に調べた。その結果、この弱い界面のネットワークを適切に設計すれば、亀裂が伝播する経路を作り出し、亀裂の進路をそらすことで破損や破壊を防げることが分かった。Barthelatたちは、ここから着想を得て、レーザーを用いてホウケイ酸ガラス製のスライドに弱い界面の3Dネットワークを彫り込んでから、ポリウレタンを浸潤させ、彫り込みのないものよりも靭性が200倍高いガラスを作製した。
この簡便な方法の原理は、自然に存在する強靭な材料に由来しており、自然界の観察によって人工物の設計を改良できるというユニークな事例が新たに加わった。
doi:10.1038/ncomms4166
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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