Research Press Release
【発生生物学】葉酸不足でマウスの精子のDNAが変化する
Nature Communications
2013年12月11日
一生にわたって葉酸欠乏食を与えられた雄のマウスの精子のDNAにエピジェネティックな変化(化学基による修飾)が生じたことが明らかになった。また、こうした雄マウスの一部は、発生異常(頭蓋顔面の異常、脊柱変形)を持つ仔を残した。今回の研究は、発生異常の父性原因の可能性に関して新たな知見をもたらしている。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
DNAのエピジェネティックな変化(例えば、DNAメチル化)が起こると、DNAの塩基配列は影響を受けないが、遺伝子の活性が変化する。これまでの研究では、食餌性葉酸が細胞のDNAメチル化と遺伝子発現のレベルに影響する場合があり、それに加えて、父親の食餌が仔の代謝を変化させる場合もあることが明らかになっていた。今回、Sarah Kimminsたちは、雄のマウスに葉酸欠乏食を一生にわたって与え、その結果として、雄の精子のDNAのメチル化に変化が生じ、その生殖能力が低下することを明らかにした。また、この雄マウスの仔は、雌雄を問わず、通常の食餌を与えられた雄マウスの仔よりも発生異常の頻度が高かった。ただし、エピジェネティックな伝達の機構が分かっておらず、その解明を通じた発生異常の原因分子の同定も今後の研究課題であることをKimminsたちは指摘している。
doi:10.1038/ncomms3889
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature