【惑星科学】火星の大気中の二酸化炭素は岩石に吸収されていた
Nature Communications
2013年10月23日
火星に存在していた二酸化炭素(CO2)を豊富に含む厚い大気層が失われた過程が明らかになった。この新知見は、火星上での炭酸化プロセス(今日の地球ではありふれた現象)を示す初めての直接証拠だ。
炭酸化は、地球上では広範に見られる鉱物学的プロセスで、CO2と液体の水とカンラン石鉱物の反応によって大気中のCO2が地中に吸収されて、地球の地殻内に炭酸塩として貯蔵されるというものだ。かつて火星に存在していたCO2を豊富に含む厚い大気層は、これに似た過程を経て失われたとする学説が提唱されている。今回、Tim Tomkinsonたちは、この学説が正しいのかどうかを突き止めるため、約3,000年前に地球上に落下した火星隕石Lafayetteに保存されていた鉱物を調べた。Lafayetteは、約13億年前の火星の地殻を形成していた。当時の火星の地殻には、微量の液体の水が存在していた。Tomkinsonたちは、電子ビームを用いて、この隕石の鉱物組成を分析し、カンラン石や長石などのケイ酸塩鉱物がCO2を豊富に含む液体水と相互作用して、炭酸塩を生成し、これがケイ酸塩鉱物の一部と置き換わっていったことを明らかにした。
Lafayette隕石は、大気がすでに薄くなっていた頃の火星から飛来したものだが、Tomkinsonたちは、炭酸化プロセスが、その30億年前、つまり、それよりかなり厚かった大気層から火星の水に大量のCO2が注入されていた頃から広範囲で起こっていた可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms3662
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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