【地球科学】土壌による炭素吸収を仲介するミミズと地球温暖化
Nature Communications
2013年10月16日
土壌にミミズがいると、土壌中に固定される炭素の量が二酸化炭素(CO2)の排出量を上回るという研究結果が明らかになった。最近、土壌にミミズがいるとCO2排出量の大幅な増加につながるという主張がなされたが、今回の新知見は、これと相反している。
全球的に見ると、土壌には、大気中の2倍の量のCO2が含まれており、ミミズは、土壌中で産生されるCO2の量、安定炭素として隔離されるCO2の量、大気中に放出されるCO2の量にそれぞれ影響を与えることが知られている。今回、Weixin Zhangたちは、土壌にミミズがいれば、ミミズによって安定化する炭素の量が、炭素の無機化過程で変換されるCO2の量を上回るという見解を示している。Zhangたちが行った実験では、アジアとヨーロッパの2種のミミズの侵入種がいる土壌では、当初、CO2排出量が増加したが、長期的には、炭素貯蔵量の増加によって相殺され、ミミズのいない土壌と比較して、土壌から放出される可能性のあるCO2の総量はあまり変わらなくなった。また、Zhangたちは、土壌での炭素貯蔵に対するミミズの影響を定量化し、土壌炭素フラックスの予測精度を高めるうえでも役立つ可能性のある数式を提唱した。
Zhangたちは、土壌中にミミズがいると、CO2排出量が33%増加するという見解は極端な過大評価である可能性が高いと結論づけた。しかし、3,000種以上のミミズがさまざまな種類の土壌に生息しているので、ミミズが地球の敵なのか味方なのかを断定するには、さらなる実験が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms3576
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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