Research Press Release
【がん】がんの治療に役立つ高血圧治療薬?
Nature Communications
2013年10月2日
このほど行われたマウスの研究で、高血圧の治療薬として一般的に用いられるロサルタンが、腫瘍の形成を抑制することが明らかになった。この新知見は、ロサルタンが将来的にヒトのがんの治療に有益な薬となる可能性を示唆している。
腫瘍の血管は、がん細胞に栄養素を供給し、抗がん剤の送達にも究極的な役割を担っている。今回、Rakesh Jainたちは、がん細胞を取り巻く環境が、こうしたがんの血管に物理的ストレスを加え、それが血流を制限し、化学療法薬が腫瘍に浸透する能力を低下させることを明らかにした。この研究では、高血圧の治療に広く用いられているアンギオテンシンII拮抗薬のロサルタンを投与すると、腫瘍環境中で腫瘍血管を圧迫するタンパク質と複雑な糖の産生量が減ることが判明した。このことは、これらのマウスにおける血管収縮を緩和し、化学療法薬5-フルオロウラシルの送達に寄与した。また、膵臓がん又は乳がんを有するマウスにロサルタンと5-フルオロウラシルを併用した場合には、5-フルオロウラシル単独投与の場合よりも平均生存期間が伸びた。
doi:10.1038/ncomms3516
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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