ポリアミンで加齢関連記憶喪失を弱める
Nature Neuroscience
2013年9月2日
ショウジョウバエでは、ポリアミンを多く含む食品を食べると、加齢とともに起こる記憶の減衰が延期できるとの論文が、今週オンライン版に掲載される。さまざまな食品に含まれるポリアミンは、ヒトの脳で年齢とともに自然に減少することが知られており、また、モデル動物では長命を促進するとされている。したがって今回の発見は、食品中のポリアミンの増強が加齢に関連する精神の衰えを延期できるかもしれないとする着想をいっそう裏付けるものである。
ほとんどの生物種はポリアミンを用いて、細胞の生存や増殖などさまざまな過程を調整している。哺乳類細胞は独自のポリアミンを合成する能力を備えているが、その本来の分子機能についてはほとんどわかっていない。一方、脳内でのポリアミン量は加齢につれて減少することが知られている。
無脊椎のモデル動物ではポリアミンが寿命を延ばし得ることから、Stephan Sigrist、Frank Madeoらは、ショウジョウバエで加齢に伴う記憶の衰えが食物のポリアミンで逆転できるものか調べた。著者らは、穏やかな電気刺激を知らせる特定の合図を学習するのが、老齢のハエでは比較的うまくいかないのに、高ポリアミン食を与えたハエはそのような欠陥を示さないことを発見した。この課題についての老齢ハエの行動は若齢ハエのものに匹敵していた。ポリアミンには自食作用(細胞がいたんだ小器官を分解して捨てる過程)を促進する役割があり、ポリアミンの有利な影響はこの役割を介していると、著者たちは指摘している。
doi:10.1038/nn.3512
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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