Research Press Release
【ナノテクノロジー】ひとひねりしたメモリーデバイス
Nature Communications
2013年8月7日
永久磁石なしで機能する磁気記憶デバイスの試作品が、今週発表される。この記憶デバイスは、永久磁石がなくても動作するため、他の磁気記憶技術よりも小型化が容易になっている。
磁気メモリーは、通常、2つの強磁性層(永久磁石層と磁気分極を調節できる層)の磁場を利用している。この2つの層は、平行にそろえることもでき、反平行にそろえることもでき、これによって、メモリーデバイスに電流が流れやすくなるかどうかが決まる。ところが、永久磁石は、小型化が難しい。今回、Yossi Paltielたちは、この問題を回避するため、らせん状にねじれた有機分子におけるスピンフィルタリング効果という最近の発見を利用して、メモリーの試作品を作製した。上向きスピン電子又は下向きスピン電子が、らせん状分子を通過するとき、スピンフィルタリング効果では、いずれのスピンが容易に通過できるかどうかが、らせんの巻き方向によって決まる。このメモリーデバイスに情報が書き込まれると、電流がらせん状分子を通過するように駆動され、一方のスピン配向をもつ電子だけが、反対側で放出される。これで、隣接するニッケル層が磁化される。
この新しいメモリーデバイスは、原理的には、1つの磁性ナノ粒子の大きさまで小型化できるので、高密度メモリーオンチップデバイスの作製がもうすぐ可能になるかもしれない。
doi:10.1038/ncomms3256
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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