【微生物学】絶食をして腸内微生物の健康を高めよう
Nature Communications
2013年7月17日
このほど行われたマウスの研究で、長寿と関連する腸内細菌の増殖がカロリー制限によって促進されることが判明した。この新知見は、カロリー制限が、健康な腸内微生物叢を誘導することで、宿主に対する健康増進効果を仲介している可能性のあることを示唆している。
食物摂取を減らすことによるカロリー制限は、さまざまなモデル生物の寿命を延ばすことが知られている。また、腸内微生物叢が宿主の健康と病気に対して果たす役割に関する認識が高まっており、腸内微生物叢の組成は、主に食餌によって決まる。今回、Liping Zhaoたちは、マウスにカロリー制限食を終生与える実験を行い、その腸内微生物叢の構造の経時的変化を報告している。Zhaoたちは、乳酸菌属などの特定の細菌が、寿命と正に相関しており、カロリー制限によって存在量が増加することを報告している。また、カロリー制限食を与えた場合に、寿命と負に相関する細菌の存在量が減少した。こうした変化は、炎症と関連していることの多いマーカーであるリポ多糖結合タンパク質の血清レベルの低下と関連しており、このことは、腸内細菌由来の抗原によって起こる炎症の軽減が、カロリー制限による健康効果の1つかもしれないことを示唆している。
こうした腸内微生物叢の構造変化によって寿命が延びる過程を明らかにし、食事によるアンチエイジング介入法の開発のためのバイオマーカーとして腸内微生物叢を利用できるかどうかを検証するためには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms3163
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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