材料科学:AI設計による生物から着想を得た水中用接着剤
Nature
2025年8月7日
人工知能(AI:artificial intelligence)モデルを活用し、自然界に存在する接着タンパク質から着想を得た超粘着性接着剤を報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。これらの接着剤は、水道管の穴を修復したり、水中で物を接着したりする能力を示し、幅広い応用可能性を実証している。
湿った環境で接着する物質を設計することは困難である。AIを活用した手法は、硬質材料の設計で成功で成果を上げてきた一方、ソフトマテリアルはより複雑で、特に超粘着性化合物は、材料の軟らかさを生む特性が接着性を阻害する特性と相反するため、特に難しい。しかし、細菌や軟体動物などの生物は、天然の粘着性タンパク質を生産しており、これらは新しい超粘着性化合物であるハイドロゲルの設計にヒントを与えるかもしれない。
24,707種類の接着タンパク質のデータセットを使用し、Jian Ping Gongら(龔 剣萍;北海道大学)は、180種類の新しい水中接着剤の設計と合成を主導するタンパク質データマイニングツールを開発した。その後、これらの接着剤の測定された強度をデータセットとして機械学習ツールを訓練し、その結果を基に機械学習駆動型の設計をもう1回実施し、より優れた水中接着剤を生み出した。その一つであるハイドロゲル「R1-max」は、海中の岩にゴム製のあひるを接着するのに使用され、波の衝撃や潮の満ち引きにも耐え、付着し続けた。もう一つのハイドロゲル「R2-max」は、水で満たされたパイプの20ミリメートル径の穴を塞ぐパッチとして使用され、5ヶ月以上にわたり漏水を防いだ。
「このような不規則で湿った表面に強く接着する超接着性ハイドロゲルは、義肢のコーティングやウェアラブル生体センサーなど、多くの医療応用において画期的な変化をもたらす可能性がある」と、同時掲載されるNews & ViewsでLaura Russoは指摘している。彼女はまた、この設計アプローチは汎用性が高く、「他の種類の機能性ソフトマテリアルにも応用できる」だと付け加えている。
- Article
- Open access
- Published: 06 August 2025
Liao, H., Hu, S., Yang, H. et al. Data-driven de novo design of super-adhesive hydrogels. Nature 644, 89–95 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09269-4
doi:10.1038/s41586-025-09269-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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