生態学:ヒトデの病気の原因となる細菌を特定
Nature Ecology & Evolution
2025年8月5日
2013年以降、数十億匹のヒトデ(sea star)の大量死を引き起こしてきたヒトデ衰弱病および広範囲にわたるコンブ生息地の喪失の原因として、ある細菌種が特定された。Nature Ecology & Evolutionに掲載されるこの研究結果は、この病気の影響を受けた沿岸海洋生態系の回復戦略の開発に役立つかもしれない。
ヒトデ衰弱病は、ヒトデの組織が崩壊する症状を引き起こし、ニチリンヒトデ(sunflower sea stars)を含む20種以上の種に影響を及ぼしている。2013年に初めて確認されて以来、この病気は非商業種における最大の海洋流行病として記録され、メキシコからアラスカまでの北米太平洋沿岸のヒトデの個体群を破壊してきた。ヒトデの減少は、その捕食者であるウニの個体数が急増し、複数の海洋生物にとって不可欠な生息地であるコンブ林が過剰に食害される事態を招いている。過去10年間にわたる病気の原因調査は、感染したヒトデに目立った病原体が見られないことや、野生集団から完全に未感染で健全な個体の確保が困難であったことが障害となっていた。
Melanie PrenticeとAlyssa-Lois Gehmanら(ブリティッシュコロンビア大学〔カナダ〕)は、野生と飼育下で隔離されたニチリンヒトデ(sunflower sea stars)を用いた7つの制御された曝露実験を実施し、非ウイルス性の生きた病原体が関与していることを示した。続いて、ヒトデの病変組織および健常組織の微生物叢を遺伝子配列解析によって比較した。その結果、病原細菌 Vibrio pectenicida がヒトデ衰弱病の原因であることを発見した。さらに、この細菌の純粋培養株をヒトデに接種する実験で、病原性が実証された。
この発見により、この病気を多様な環境と種において試験するのを可能にし、その伝播メカニズムやより効果的な管理方法に関する理解が深まる。それにより、野生における発生時にも的確な対応が可能となる。
- Article
- Published: 04 August 2025
Prentice, M.B., Crandall, G.A., Chan, A.M. et al. Vibrio pectenicida strain FHCF-3 is a causative agent of sea star wasting disease. Nat Ecol Evol (2025). https://doi.org/10.1038/s41559-025-02797-2
doi:10.1038/s41559-025-02797-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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