【進化】平均的が一番というわけでもない
Nature Communications
2013年7月3日
ある特定の性質の望ましいレベルというものは、過剰と不足という極端な状態の中間であることが多い。しかし、過剰という極端状態にやや偏っている方が個体の生存が最適化する可能性のあることがモデル作成研究によって明らかになった。この新知見は、自己免疫疾患が発生し、それが維持される過程を説明できる可能性がある。その一例が、自己免疫疾患患者で、外敵から効果的に身を守ることができるが、健康な体内組織も攻撃するという犠牲を払っている。同じことが、アナフィラキシーショックについても言え、比較的害の少ないアレルゲンが、命にかかわる可能性のある全身性免疫反応を引き起こすのだ。
今回、Mark Urbanたちは、やや偏りのある生存の最適化が、生態・進化的フィードバックを介した著しい防御の発生を促進するために十分なことを示す理論的枠組みを明らかにした。
防御行動への過剰な投資は、体が通常無視すべき状況や物質に対して反応が生じることを示唆している。今回発表された新しいモデルは、個体の生存が防御に対する投資と指数関数的に関連していることを示唆しており、患者が完全に防御された状態に達する閾値の存在を示している。このモデルを、投資の増加に応じた繁殖力の線形的減少と組み合わせれば、繁殖力の低下を最小限に抑えつつ、できる限り高いレベルの防御を実現できると考えられるのだ。ただし、Urbanたちは、個体の集団が、よく適応した個体と適応できない個体によって常に構成されている点を指摘し、適応できない個体が外敵の繁殖を促進するため、集団全体では、防御のためにさらに多くの資源を投資するように強いられているという考え方を示している。
doi:10.1038/ncomms3085
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