Research Press Release
依存症治療の新しい標的
Nature Medicine
2010年8月23日
体内に存在する天然の酵素、アルデヒドデヒドロゲナーゼ-2(ALDH-2)の阻害が、コカイン依存症の治療法になる可能性があるとの報告が寄せられている。
薬物依存症の神経生物学的研究は数多く行われているが、コカイン依存には有効な治療法はない。ALDH-2は、アルコールの飲み過ぎ後に蓄積する二日酔いの原因となる分子、アセトアルデヒドのレベルを下げることが知られている。L Yaoたちは、ALDH-2の阻害剤が、ラットのコカイン自己摂取を防ぐことを明らかにした。この阻害剤は、間接的に働いて、コカインをはじめとする薬物の報酬効果に不可欠な分子であるドーパミンの生産と放出を減少させる。
重要なのは、この阻害剤がコカインの自己摂取を防ぐだけでなく、再燃(一時期改善した後で、再び依存状態に戻ること)も防げることである。依存症の再発は、本来の依存症と同じくらい深刻な問題であり、ALDH-2阻害剤の治療効果は真剣に検討する価値がある。
doi:10.1038/nm.2200
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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