Research Press Release
細胞の仕組みを操作する微細なツール
Nature Methods
2010年8月2日
細胞を増殖させる表面の硬さを制御する技術が、Nature Methodsに発表される。これは、細胞の機械生物学に関する研究室実験の制御性を向上させるものであり、細胞が外界からの機械的な力をどのように感知してそれにどう反応するのかを解明するのに重要である。
細胞は体内で孤立して存在するわけではなく、絶えずほかの細胞および細胞外基質と接触し、分子的および機械的なシグナルはもとより、構造的な支持も得ている。培養中の細胞でも、増殖に用いる表面の機械的特性が細胞の形状および機能に影響を与えることを示す証拠が続々と得られており、そうした影響に関する研究は、外界の機械的特性を細胞がin vivoで感知する仕組みの解明を進展させると考えられる。既存の方法では、細胞が受け取る活性リガンド分子の量など、ほかの特性を変化させずに表面の硬さのみを変化させることができず、細胞の挙動に対する硬さの寄与を正確に探ることが困難であった。
C Chenたちは、高さ1~数ミクロンの微小な杭が並べられた上で増殖する細胞に関して、杭の高さがほかの特性を変化させずに増殖表面の硬さを決定することを示した。この杭の並びを利用することにより、硬さのみを調節することで幹細胞分化などの細胞の諸挙動に影響が及ぶことが明らかにされた。
doi:10.1038/nmeth.1487
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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