Research Press Release
先天的な代謝異常の新しい治療法
Nature Medicine
2010年7月26日
メトロニダゾールとNアセチルシステインという2つの薬を組み合わせると、子どものエチルマロン脳症の治療に効果があるという。この病気は先天性代謝異常で、消化器系、循環器系、神経系に症状が現れる。今回寄せられた報告によれば、この方法が小児エチルマロン脳症患者の治療に役立つかもしれない。
エチルマロン脳症の原因は、硫化物の代謝に重要な働きをするあるミトコンドリアタンパク質の遺伝子に起こった変異である。硫化物はおもに腸内微生物叢によって作られるので、M Zevianiたちは、抗生物質(メトロニダゾール)とNアセチルシステイン(硫化物を緩衝する分子の前駆体)とを一緒にマウスとヒト患者に投与して、効果を検証した。
するとこの薬剤投与によって、エチルマロン脳症の原因となる変異をもつマウスでは寿命が大幅に延び、5人の患者では臨床症状が著しく改善され、副作用はみられなかった。これは期待できる結果であり、もっと大規模な臨床試験で効果を確認する必要がある。
doi:10.1038/nm.2188
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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