Research Press Release
ウイルスを捕まえるために
Nature Immunology
2010年3月22日
免疫細胞がインフルエンザワクチンをすばやく効率よく捕捉して、防御抗体応答の引き金を引くようすが明らかにされた。
抗原提示を行う樹状細胞(DC)は免疫細胞の1つで、抗原(今回の場合は、ワクチンに使われた不活化インフルエンザウイルス)をとらえて加工して一部を提示し、ほかの免疫細胞(B細胞など)を活性化する。
M CarrollとS Turleyは、流入領域リンパ節中のDCが、ウイルス表面に存在する糖に結合することを明らかにした。この糖を認識するのはSIGN-R1とよばれる受容体で、この受容体を遮断するとDCによるインフルエンザウイルスの認識が阻害される。さらに重要なのは、続いて周囲のB細胞(抗体産生を行う細胞)によって起こるはずの抗体応答が鈍化することである。またCarrollとTurleyは、インフルエンザウイルスを接種したマウスを用いて、リンパ節内での生きたDCの動きを画像化した。ウイルス接種の前にはリンパ節のDCは動かなかったが、SIGN-R1受容体を使ってリンパ内の不活化ウイルスをとらえるとすぐにDCは動くようになり、B細胞の多い濾胞領域へと移動する。
DCが効率よくウイルスをとらえてB細胞へと運ぶおかげで、生きたインフルエンザウイルスといった急激に複製する病原体との闘いに不可欠な、すばやい抗体応答の発生が可能になる。
doi:10.1038/ni.1856
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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