Research Press Release
がん細胞でのp53活性の調節
Nature Cell Biology
2010年3月15日
BRD7タンパク質はp53を活性化して、がん性腫瘍の発症を抑制している可能性がある。p53経路の不活性化はがん発生の一因となるので、転写因子p53は非常に重要な腫瘍抑制タンパク質である。
乳がんではBRD7の発現がみられなくなっていることが多いが、BRD7が腫瘍形成を阻害する仕組みは、現状でははっきりわかっていない。R Agamiたちは、BRD7がp53に結合して活性化することを見いだした。BRD7はまた、染色体中でp53標的遺伝子が存在する箇所の構造の調節もしており、この部位での転写の効率をよくすることができる。このような働きをするBRD7が失われると、培養ヒト細胞中では発がんにつながる形質転換が起こるようになる。
Agamiたちは、200を超えるヒト乳がん標品の分析を行い、BRD7発現が起こらなくなっているのは、機能しているp53を含む腫瘍だけであることを見いだした。この知見から、ヒトがんでのBRD7の選択的喪失がp53経路のサイレンシングを起こす方法の1つであることが示唆され、p53の転写活性調節の仕組みについての手がかりが得られる
doi:10.1038/ncb2038
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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