Research Press Release
核廃棄物を捕捉する
Nature Chemistry
2010年1月25日
潜在的に危険な核廃棄物の一種であるセシウムイオンを選択的に捕捉・保持できる開骨格を有する材料が、Nature Chemistry(電子版)に報告される。セシウムの放射性同位体、セシウム137は、非常に毒性が強く、まだチェルノブイリ付近に残っている主な放射線源と考えられている。
N DingとM Kanatzidisは、有機カチオンを含んだフレキシブルな構造をとる硫化物材料を作製した。それらの有機カチオンは、水溶液中でセシウムイオンと入れ替わることができる。この入れ替わりがきっかけとなり、その構造体は形状を変え、硫化物骨格の窓がまるでハエトリグサのようにセシウムイオンの周りで閉じる。このため、セシウムイオンは逃げることができない。セシウム以外の類似イオンは、濃度が非常に高くても、この材料によって捕捉されない。
セシウム137は核分裂で生成しうる。水溶性であり、毒性が強いため、環境中に放出されれば長年にわたって残存する可能性があり、高いリスクをもたらす。
doi:10.1038/nchem.519
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change