Research Press Release
ワクチン接種後の肺炎球菌の疫学的性質の変化に関する集団ゲノミクス解析
Nature Genetics
2013年5月6日
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)は、肺炎、菌血症、髄膜炎の主たる原因となっている呼吸器系病原体だが、このほど、この細菌の大規模コレクションを用いて、ゲノムの塩基配列解読が行われた。米国では、小児に対して免疫を付与するための多糖タンパク結合ワクチン(PCV7)が2000年に導入されたが、今回の研究では、PCV7が疾患と薬剤耐性の発生に影響を及ぼした過程に関する手がかりが得られた。
今回、Nicholas Croucherたちは、米国マサチューセッツ州在住の小児の健康調査(2000-2007年に実施)における肺炎球菌の無症候性保菌者から得られた616例の肺炎球菌のゲノム全体について塩基配列解読を行った。その結果、PCV7の導入によって肺炎球菌の集団が破壊され、このことが、ワクチン型(VT)菌株が非VT系の近縁種に置き換わったことと大いに関連していることが判明した。そして、Croucherたちは、PCV7導入後に侵襲性肺炎球菌性疾患の発生率が低下したことの主たる原因が肺炎球菌の血清型の変化であることも明らかにした。
doi:10.1038/ng.2625
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