IL-17を産生するB細胞が、トリパノソーマと闘う
Nature Immunology
2013年4月8日
生きたトリパノソーマに接触すると、マウス免疫系のB細胞から、感染に対する防御作用を示すインターロイキン17(IL-17)が放出されることが明らかになった。
寄生虫であるクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)の感染は強い炎症応答を引き起こし、これを放置すると、免疫細胞の働きによる組織損傷と消耗性疾患につながる恐れがある。David Rawlingsたちは、クルーズトリパノソーマが放出する酵素トランスシアリダーゼに曝されたB細胞が、免疫系のメディエーターの1つであるIL-17の発現を誘発することを明らかにした。IL-17は、白血球の中で最も数の多い好中球を動員する働きをする。IL-17欠損B細胞をもつマウスでは、トリパノソーマ感染を制御できないため、正常マウスに比べて肝臓の損傷がひどくなり、生存率が低下する。この事実は、B細胞によるIL-17産生がいかに重要かを示している。
さらに著者たちは、B細胞がIL-17の発現を開始させるのに利用する情報伝達カスケードが古典的なものとはまったく異なり、B細胞表面のCD45分子のトランスシアリル化が引き金になることを発見した。
これらの知見が示すように、B細胞は抗体を産生するだけにとどまらず、寄生虫と闘ううえでもっと別の役割をも果たしている。トランスシアリダーゼを発現する他の病原体の抑制にも、この働きが重要かもしれない。また、B細胞が関係するとされる一部の自己免疫症候群では、IL-17の発現が制御されなくなっているのかどうかという、疑問も浮かんでくる。
doi:10.1038/ni.2569
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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