Research Press Release
マイクロファイバーに細胞を詰め込む
Nature Materials
2013年4月1日
細胞と細胞外基質タンパク質を充填できるメートル長のゲルマイクロファイバーを用いて組織特有の機能を再現できることが、今週のオンライン版で報告されている。これらのファイバーは、織ったり巻いたりすることにより組織に似た形状にできるので、筋線維、血管、神経回路網の再構成用鋳型として利用できる可能性がある。
細胞を充填したファイバー状のゲルは、標準的なマイクロ流体チップで容易に作製可能である。しかし、この場合、生体組織に特有の細胞-細胞結合形成を促進できない合成高分子を用いて、高速ゲル化を行う必要がある。このたび、竹内昌治らは、二重同軸マイクロ流体デバイスを用いて、コラーゲンやフィブリンといった天然の細胞外基質タンパク質に細胞を埋め込み、すみやかにゲル化するヒドロゲルシェル(後で特異酵素によって除去される)で覆って保護した。天然の細胞外基質タンパク質を用いたことにより、必要な細胞-細胞相互作用が可能になった。研究者らは、心筋細胞を埋め込むとファイバーが自然に拍動すること、また内皮細胞を封入すると管状構造が、大脳皮質細胞を封入すると神経回路網がファイバー内に形成されることを報告している。
さらに、研究者らは、膵島細胞を充填したマイクロファイバーを糖尿病マウスの腎臓の真下に移植すると、約2週間にわたって血中グルコース濃度が正常化することを示している。これらのファイバーは後で取り除くことが可能であった。
doi:10.1038/nmat3606
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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