初体験、DNA損傷、アルツハイマー病
Nature Neuroscience
2013年3月25日
見知らぬ環境の探索のような一見地味な経験が、脳の活動を高め、ニューロンのDNAに損傷を引き起こしかねないとのマウスでの研究が報告される。この研究はまた、この効果は神経変性疾患では悪化するとも指摘している。
LennartMuckeたちは、新しい環境の探索をさせたマウスが、脳のニューロンでDNA二本鎖切断(DBS)をいくつも示していることを発見した。これが起こる脳領域には、空間記憶に必要な歯状回が含まれている。ただし、これらDNA切断の多くは、細胞のDNA修復機構を経て24時間以内に修理されている。Muckeらはまた、アミロイドβにニューロンを曝すと、活動しているニューロンでDSBの数が増加することも発見した。アミロイドβは、アルツハイマー病(AD)患者の脳に蓄積されると判明しているタンパク質断片で、この病気の主因である可能性がある。この報告では、微小管安定化タンパク質であるタウの濃度を下げるか、もしくは抗てんかん薬のレベチラセタムを投与して異常な脳活性を阻害すると、これらニューロンでのDSBの増加が抑えられるとしている。
これらの発見は、比較的平凡は活動をしている際でもニューロンを健全で安定した状態に維持するには、DNA修復機構が鍵を握る要素であることを示唆しており、アミロイドβタンパク質の蓄積がニューロンのストレスを悪化させ、DNA修復機構を凌駕して神経変性や病気に導く可能性があるとする新たな仕組みを暗示している。
doi:10.1038/nn.3356
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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