Research Press Release
【医学研究】細菌のミニ細胞をワクチン接種に利用する
Nature Communications
2013年3月13日
もっと安全なワクチンを設計するための新しい方法が考案された。弱毒化した細菌を含むワクチンの場合、子どもや免疫系の弱い患者は、ワクチン接種を受けていても病気にかかることがある。今回考案された細菌由来のミニ細胞を用いたワクチンは、こうしたリスクをなくせる可能性がある。
効率のよいワクチンは、III型分泌系(T3SS)という細菌のタンパク質注入システムを介して、免疫細胞に抗原(免疫応答を引き起こす物質)を送り込む。ところが、T3SSはエネルギーを必要とし、そのため、生きた細菌でしか活性を保てない。細菌のミニ細胞は、細菌の細胞分裂の異常の結果として生じる。ミニ細胞にはDNAが含まれておらず、複製できないが、一部の細胞機能を維持するタンパク質が含まれている。今回、J Galanたちは、ネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)のミニ細胞を遺伝的に修飾して、正常に機能するT3SSが含まれるようにした。さらに、Galanたちは、マウスを用いた研究で、このミニ細胞を利用することで、T3SSを介して、抗原を免疫細胞に送達し、免疫応答を誘導できることを明らかにした。
doi:10.1038/ncomms2594
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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