Research Press Release
強迫性障害を正常に
Nature Neuroscience
2013年2月25日
難治性の強迫性障害(OCD)の治療に用いられる脳深部刺激療法(DBS)は、患者の脳における活動や連絡のパターンを正常化するという報告が、今週オンライン版に掲載される。
Martijn Figeeほかの研究者は、報酬を期待できる作業をしている際に機能的磁気共鳴画像法でOCD患者と健常対照者の脳活動を観察する実験を行った。健常対照者に比べ、OCD患者では報酬を期待する間、報酬の処理に重要とされる側坐核という脳領域で活動が減少した。しかしFigeeらは、OCD患者にDBS治療を施すとこの差異が正常化されることを発見した。健常対照者に比べOCD患者では側坐核と前頭皮質との連絡も増強しており、ここでも、DBS治療により正常値が回復できた。最後にFigeeらは、症状発症の引き金となる画像を患者が見たとき生じる異常な活動パターンをDBSが正常に戻すことも発見した。
OCDの処置にDBS治療が用いられるとはいえ、それが強迫行動の減少につながる仕組みは知られていない。今回の研究は、DBS治療によって誘導される脳活動の変更についての洞察を提供しており、これがこうした治療効果の背景にあるのだろう。
doi:10.1038/nn.3344
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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