Research Press Release
微生物学:健康な血管は健康な腸から
Nature Communications
2012年12月5日
腸内細菌の組成と機能に生じた特定の変化が、アテローム性動脈硬化症に関連していることが明らかになった。今回の研究成果は、腸内に生息する細菌が、アテローム性動脈硬化症の発生に影響を与える過程に関する手がかりになる。研究結果を報告する論文が、掲載される。
腸内細菌群集は、ヒトの健康にとって重要な意味を持っている。腸内微生物叢が変化すると、喘息や糖尿病などの疾患の発生が促進される場合があるからだ。今回、F Backhedたちは、症候性アテローム性動脈硬化症患者の腸内細菌の全体的な遺伝的構成(メタゲノム)を調べて、健常者のメタゲノムと比較した。その結果、患者と健常者では、腸内微生物の種類とメタゲノムにコードされた特異的な代謝機能に差があることが判明した。例えば、アテローム性動脈硬化症患者の腸内細菌の方が、自然に見られる抗酸化物質を産生する遺伝子が少なく、患者の血中抗酸化物質の濃度は健常者より低かった。同様に、炎症を発生させる細菌成分の産生は、アテローム性動脈硬化症の発生を促進する過程であることが知られているが、この過程に関与する遺伝子は、アテローム性動脈硬化症患者のメタゲノムにおいて高頻度で見つかった。
doi:10.1038/ncomms2266
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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