Research Press Release
乾癬の易罹患性の手がかり
Nature Immunology
2012年12月3日
乾癬の皮膚病変には大量の免疫細胞が浸潤するが、その中に含まれるTH17細胞は、炎症誘発性メディエーターであるインターロイキン-17(IL-17)とIL-22を分泌する。このような応答は皮膚の微生物感染を制御するのに役立つが、乾癬の場合は、この応答が過剰に働き、表皮の肥厚と大量の好中球の浸潤を引き起こし、この好中球が損傷部位で有害なメディエーターを放出する。
Xiaoxia Liたちは、TH17細胞におけるIL-17情報伝達の調節不全が、病気に関係することを明らかにした。彼らが利用したのはマウスの乾癬モデルで、IL-17受容体と相互作用するタンパク質Act1に特異的な変異を持つ。このAct1については、ヒトの乾癬にも関連する変異があることが知られている。
正常な場合はIL-17情報伝達が引き金となって自己限定的な炎症応答が起こるが、Act1変異マウスの場合、自発的に慢性の皮膚炎が発生する。変異Act1は、炎症応答を終わらせるシャペロンタンパク質hsp90とうまく結合できないことが判明した。その結果、TH17細胞がIL-22の生産を止められなくなる。この変異マウスで中和抗体によってIL-22を阻害すると、皮膚の炎症がやわらぐことがわかった。これらの知見が示すように、欠陥のあるAct1を発現する患者に対しては、抗IL-22治療が有効かもしれない。
doi:10.1038/ni.2479
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