【動物学】雌のパンダが発情期に入ったかどうかを判定するための非侵襲的試験
Scientific Reports
2012年11月22日
近赤外分光法(NIRS)という非侵襲的な方法を「アクアフォトミクス」という新しい科学分野と組み合わせて、雌のジャイアントパンダが発情期(排卵に先立つ性的興奮期)に入ったかどうかを検出できることが明らかになった。その詳細を報告する論文が、今週、学術論文誌Scientific Reportsに掲載される。
アクアフォトミクスとは、R Tsenkovaによる造語で、水と光の相互関係の動態と生物学的機能との関係を説明する科学領域だ。Tsenkovaたちは、水のスペクトルパターンがバイオマーカーになりうると考えて、アクアフォトミクスとNIRSを用いて疾患の診断を行ってきた。ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)は、2011年のIUCNの絶滅危惧種に関するレッドリストで絶滅危慎種とされ、その個体群を維持するためには飼育下繁殖事業を行わなければならない。雌のパンダの発情状態を正確に追跡観察することは、その排卵の正確な時期を把握するうえで重要だ。パンダの排卵は、2月から6月の繁殖期に自発的に起こる。
今回、Tsenkovaたちは、NIRSとアクアフォトミクスを用いて、雌のジャイアントパンダの尿サンプルを解析して、水のスペクトルパターンの特定の変化を発情期診断のバイオマーカーとして使えないかどうかを評価した。そして、尿中の水の水素結合構造が発情期に増加することを報告している。このことは、発情状態の追跡観察にNIRSの利用が役立つ可能性を示唆している。この新しい発情期判定法を検証するには、今後、ジャイアントパンダやその他の生物種に関するさらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/srep00856
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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