Research Press Release
幹細胞:移植された幹細胞の特性を調べる
Nature Communications
2012年10月17日
移植された幹細胞をin situで調べて、この幹細胞に関する理解を深めることは、幹細胞の治療法としての臨床応用を成功させるために必要とされる。このほど行われた研究では、神経幹細胞・前駆細胞(NSPC)の安全性と有効性の評価が行われ、ラットに移植されたNSPCの挙動が、培養細胞での実験による予測と異なることがわかった。この結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
NSPCの移植は、神経変性疾患の有望な治療法だが、これまで、移植後のNSPCのプロフィールを解析した研究はなかった。今回、岡田誠司(おかだ・せいじ)たちは、移植前、細胞培養を始めて7日後、ナイーブ状態、マウスの損傷脊髄中のNSPCの細胞特性をそれぞれ評価して、比較した。この研究では、バイオイメージング、フローサイトメトリーによる単離、RNA塩基配列の超高速解読が行われ、その結果、NSPCには脊髄損傷に有益な効果が見られたが、NSPCの挙動が、培養細胞を用いた研究に基づいた予測と有意に異なることが明らかになった。今回の研究結果は、NSPCがその環境に対して脆弱なことを明確に示しているが、その一方で、幹細胞治療の進歩にはさらなる解析が重要であることを強調している。
doi:10.1038/ncomms2132
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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