Research Press Release
【植物科学】トウモロコシ栽培で治療薬を作る
Nature Communications
2012年9月19日
リソソーム蓄積症の治療薬は、高コストの細胞培養技術でしか製造できなかったが、このほど、温室栽培のトウモロコシによって製造できることが明らかになった。この新知見で、希少だが生命にかかわる遺伝性疾患の患者を治療するためのコストを大幅に低減できる可能性が生まれた。この研究結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
今回、A Kermodeの研究チームは、ムコ多糖症Ⅰ型の治療に用いる酵素α‐L‐イズロニダーゼを合成できる遺伝子組換えトウモロコシの種子を作製した。ムコ多糖症Ⅰ型の患者は、心臓、脳とその他の器官の損傷が進行し、治療せずに放置すると、幼児期に死亡する。現在のところ、この酵素の製造には非常に多額のコストがかかり、小児患者の治療費は、通常、年間30~50万ドル(約2千4百万~4千万円)にのぼり、成人の治療費は、それよりもかなり高額となっている。製造法として、この酵素が機能するために必要な生化学的微調整ができる哺乳類細胞の培養による方法しかないからだ。Kermodeたちは、トウモロコシを「だまして」特定の修飾ができるようにする方法を見つけ出して、この治療薬酵素をトウモロコシ種子で製造し、究極的にリソソーム蓄積症の治療に利用しうる道筋を明確に示した。
doi:10.1038/ncomms2070
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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