Research Press Release
インスリン分泌と小胞体ストレスとを結びつける
Nature Cell Biology
2012年9月17日
小胞体ストレスシグナル伝達とインスリン産生・分泌の間のつながりが明らかにされた。この知見は、糖尿病の新しい治療法開発への道を開くかもしれない。
Wolfram syndrome 1(WFS1)遺伝子の変異は、若年性糖尿病を特徴とするウォルフラム症候群を引き起こす。小胞体ストレスシグナル伝達は正常な小胞体で行われるタンパク質の折りたたみを障害するが、WFS1はこのシグナル伝達を調節することが知られており、またインスリンを産生する膵臓ベータ細胞の正常な機能に不可欠である。
S Fonsecaたちは、マウスではWFS1が膵臓ベータ細胞からのインスリン放出の調節という役割も持っていることを報告している。食餌をとった後に血流中にグルコースが溜まると、WFS1は小胞体膜から細胞膜に移動してインスリン産生・分泌を刺激する。小胞体ストレスを起こしている膵臓ベータ細胞で、WFS1の発現レベルを上昇させると、インスリン産生が回復することもわかった。Fonsecaたちは、WFS1は新規な糖尿病治療法の重要な標的となるだろうと考えている。
doi:10.1038/ncb2578
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature