Research Press Release
【がん】特定の腫瘍細胞を標的とする細胞透過性ペプチド
Nature Communications
2012年7月18日
特定の腫瘍の細胞系譜を標的とする細胞透過性ペプチドに関する研究が行われた。こうした細胞透過性ペプチドは、抗がん分子を腫瘍細胞に送達する優れたシステムとなる可能性を秘めている。この研究について報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
細胞透過性ペプチドについては、すでに研究報告があるが、それぞれの種類の腫瘍細胞に対する特異性の解明は、ほとんど進んでいない。今回、愛知県がんセンター研究所の近藤英作たちは、培養下で、一部の細胞透過性ペプチドが、1~2種類の腫瘍細胞だけを透過することを明らかにした。近藤たちは、培養下で、白血病細胞を標的とするペプチドを集中的に調べ、このペプチドが、直ちに非がん細胞を透過しなかったことを発見した。また、この種類の細胞へのペプチドの取り込みにとって重要な意味をもつ可能性のある輸送体も同定した。さらに、既知の腫瘍抑制因子に結合したペプチドを使用したところ、培養下で白血病細胞の死滅率が上昇し、マウスにおいて腫瘍の転移率が低下した。以上の新知見は、このペプチドを特定の種類の腫瘍細胞を標的とするために利用できる可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms1952
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature