【動物】生まれながらに身についた反響定位能力
Nature Communications
2012年4月11日
コウモリは、反響定位によって、物体からの距離と物体の表面形状を検出しているが、コウモリの聴覚皮質は、生まれながらにして反響定位の「配線」がなされているという見解を示した論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この論文では、コウモリが、反響定位による周辺環境の探索を能動的に始める前に、反射遅延調節ニューロンという基本的な皮質の特徴が、すでに確立されていることが報告されている。
コウモリが空間定位と獲物の捕獲を行うには、反射遅延を用いた物体との距離の神経計算を習得しなければならない。しかし、能動的な空間知覚と相関する神経回路が経験依存的な可塑性を通じて確立されるのか、それとも生得機構によるものなのかがわからなかった。今回、C Vossたちは、採餌行動の異なる2種のコウモリにおいて、生後第1週の段階で、機能しうる回路が背側聴覚皮質にすでに組み込まれており、この回路によって、模擬パルスと模擬エコーの時間間隔に基づく距離計算ができることを明らかにした。つまり、こうした回路は、反響定位と飛翔が実際に始まる前に存在し、活性化しているのだ。Vossたちは、音波探知による距離測定を行うための皮質機構が生まれながらに備わっているため、能動的な反響定位行動と飛翔を初めて行う幼若期のコウモリの生存を高めているという見解を示している。
ただし、Vossたちは、コウモリが成熟する間に可塑性と経験に依存した遅延調節の変化が生じること(他の哺乳類で実証されている)が、今回の研究結果によって否定されたわけではない点を指摘している。また、今回の研究では、フィードバック系が果たす役割やコウモリの発声については検討されていない。なお、ヒト乳幼児においてはフィードバック系が役割を果たしている。
doi:10.1038/ncomms1782
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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