Research Press Release
腸のルート変更で血糖値を下げる
Nature Medicine
2012年5月21日
腸の中央部、すなわち空腸がグルコースを感知し、腸-脳-肝軸の一部として肝臓でのグルコース生産の調節に役割を果たしていることが明らかになった。
糖尿病の古典的特徴は、血糖値が高いことである。この血糖値の上昇は、肝臓での内因性のグルコース生産を低下させるようにと、インスリンがうまく肝臓に情報を伝えられないために起こる。その原因は、2型糖尿病の場合にはインスリン抵抗性のため、1型糖尿病の場合には、この必須ホルモンであるインスリンがないためである。
Tony Lamたちは、空腸がグルコースレベルを感知して、ニューロン伝達を介して肝臓にグルコース生産を抑える指令を出すよう、脳に情報を伝えていることを明らかにした。1型糖尿病のラットモデル2匹に、十二指腸-空腸バイパス術という肥満の外科的治療を施すと、術後2日以内に血糖値が低下することがわかった。
これらの結果は、1型糖尿病に見られる血清グルコース濃度の上昇を外科的に改善できる可能性を示しているが、このバイパス術は、ヒト患者の場合も含め、まだ実験段階にある。また血糖値に対する作用も、術後2週間という短い期間でしか検証していない。ヒトの糖尿病に応用する前に、まずこの作用が起こるしくみを明らかにする必要がある。
doi:10.1038/nm.2745
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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