【遺伝】日本人の遺伝的起源
Scientific Reports
2012年4月6日
世界94か国のヒト集団のデータについて全ゲノム解析が行われているが、日本でのヒトの定住に関する手がかりが得られたようだ。この新知見を報告する論文がScientific Reportsに掲載される。
10000年以上も続いた日本列島の孤立状態において、唯一の住人が縄文人だった。この孤立状態は、今から約2000年前に大陸から弥生人が移住してきたことで終わった。弥生人は、稲作農業の技術と金属製の道具を持っていた。ところで、現代の日本人集団に対する縄文人の遺伝的寄与については、日本人集団が、様々なレベルでの混血(遺伝子の混合)を経ており、縄文人のみを祖先とする者が存在しないため、解明が進んでいなかった。
今回、Y Heたちは、全世界の94のヒト集団に由来するゲノム全域のデータに含まれる一塩基多型(DNAの「一文字」だけが異なる変異)の定量的解析を行い、縄文人の起源に関する仮説を立て、現代日本の遺伝的プールに対する縄文人と弥生人の相対的寄与を推定した。推定アレル頻度の解析では、縄文人の起源が北東アジアであることが示唆された。また、Heたちは、縄文人の遺伝的寄与が日本の本土で約33%、琉球諸島で約60%であることも明らかにした。今後は、特に東アジア由来のデータを充実させ、さらなる解析を行うことが、こうした推測の精度を高めるうえで役立つとHeたちは指摘している。
これまでの人類学研究では、弥生人が、大規模な集団を支えるために十分な食料を得る能力の点で縄文人より優れていたため、弥生人の集団が急速に拡大し、その後、西日本から他の地域へ分散したことが示唆されていたが、今回の研究結果は、こうした仮説を裏づけている。
doi:10.1038/srep00355
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change