Research Press Release
【海洋学】大気中から汚染物質をくみ出す海洋生物ポンプ
Nature Communications
2012年5月30日
植物プランクトンは、顕微鏡で見える程度の海生植物群だが、北極海の大気中に含まれる有機汚染物質を減らすうえで役立っていることが、このほど行われた研究で示唆されている。この結果は、北極海のような自然のままの環境へ輸送される汚染物質の低減を図るうえで重要な意味を持つ可能性がある。研究結果の詳細を報告する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。
残留性有機汚染物質(POP)の生物濃縮は、寒冷環境の方が高いと考えられている。そのため、大気を経由して輸送されるPOPが北極海の生態系に及ぼす影響に関して懸念が生じている。今回、J Dachsたちは、「生物ポンプ」過程について調べた。海洋の植物プランクトンは、表層水中で、陸上の植物と同じように光合成した後、最終的には有機粒子として海底に沈降する。このように大気中の気体が深海に輸送され、変換されることでもPOPは除去される。今回の研究では、グリーンランド海流と北極海の野外調査が行われ、生物ポンプによって汚染物質の輸送が大幅に遅延していることが明らかになった。したがって、生物ポンプ過程は、北極海のような環境中での汚染物質の蓄積を減らすうえで役立っている可能性が認められる。
doi:10.1038/ncomms1858
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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