Research Press Release
抗生物質の使用がアレルギーと喘息を悪化させる
Nature Medicine
2012年3月26日
抗生物質を投与したマウスや無菌環境で育てたマウスは、発症するアレルギーや喘息の程度が強くなることが明らかになった。この知見は、ある種の細菌にアレルギー疾患を防ぐ働きがあると考える「衛生仮説」を裏付ける。
多くの疫学研究で、喘息のようなアレルギー性気道疾患の発症リスクの上昇と腸内細菌の変化との間に関連があることが判明している。しかし、どのような型の細胞や分子がこの関連の原因となるのか、正確にはわかっていない。
David Artisたちは、5種類の抗生物質を組み合わせて投与したマウスや無菌状態で育てたマウスが、イエダニ、チリダニ類由来のアレルゲンに反応して、普通よりも重いアレルギー性気道疾患を発症することを明らかにした。抗生物質投与によって、アレルギーに関係するIgE抗体の血中濃度と、アレルギーの際に活性化する免疫細胞である好塩基球数が上昇する。腸内の有用細菌(善玉菌)は免疫系のB細胞にシグナルを送って、IgEの分泌を抑制する。抗生物質投与によって有用細菌叢が変化すると、B細胞からのIgE分泌量が増え、これが骨辞の好塩基球前駆細胞に作用し、その発生を促進する。
腸内細菌叢を意図的に変化させるとどうして骨髄での好塩基球の発生に影響が及ぶのか、またどうしてアレルギー疾患が悪化するのか、これまで知られていなかったつながりが、これらの知見によって明らかになった。
doi:10.1038/nm.2657
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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