Research Press Release
甲の毒は乙の薬
Nature Neuroscience
2012年2月27日
今週のNature Neuroscience誌電子版の論文によると、がん細胞を殺すことで知られる化学療法薬は、脳卒中の動物モデルでは神経細胞の細胞死を防ぐ能力がある。 化学療法薬ABT-737は、プログラム細胞死を促進して腫瘍を治療する。ところが、虚血や脳卒中のように脳の一部への血流が一時的に遮断された後にこの薬を投与すると神経細胞死を防ぐこともできると、Elizabeth Jonasらは報告している。この薬は、虚血の際に生じるタンパク質でそれ自身プログラム細胞死を促進するプロデスフラグメントdeltaN-Bcl-xLの作用を阻害して効くとみられる。 Jonasらはこの薬剤が腫瘍細胞を殺す一方、虚血発症時に神経細胞を保護するらしい理由は明らかにしなかったが、これらの発見はBcl-xLが脳卒中の治療標的になりうることを示している。
doi:10.1038/nn.3054
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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