Research Press Release

猛暑が小麦の老化を早める

Nature Climate Change

2012年1月30日

作物収量を減らす影響のある作物の老化は、現在の大部分の作物モデルで過小評価されており、小麦の老化が極度の暑さによって加速することが明らかになった。この新知見は、小麦生産にとっての気候温暖化が、現在の作物モデルによる予測以上の大問題であることを示唆している。この研究結果を報告する論文は、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。 気候変動が農業に及ぼす影響を予測する際の不確実性の重要な原因の1つは、極度の高温に対する作物の応答があまり解明されていないことだ。今回、D Lobellたちは、インド北部での小麦の生育に関する人工衛星の測定結果を用いて、摂氏34度を超える高温に曝露された後の小麦の老化速度をモニタリングした。 広く用いられている2つの作物モデルによるシミュレーションでは、高温が小麦の老化に与える影響が過小評価されることが示唆された。老化の開始は、登熟、したがって作物収量の重大な制約であるため、作物モデルでは収量の減少が過小評価される可能性が高い。以上の新知見は、農業における適応策の成否が、非常に暑い日に対する作物の感受性をうまく低下させられるかどうかにかかっていることを示唆している。

doi:10.1038/nclimate1356

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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