Research Press Release
グラフェンのもう1つの透過性
Nature Materials
2012年1月23日
グラフェンは、特定の基板のぬれ挙動に影響を及ぼさないことが、Nature Materials(電子版)で報告される。ぬれ応答を損なわずに表面の電子物性を調節できれば、優れた導電性や超撥水性の表面コーティングが得られるはずである。 金網のような二次元原子構造を持つグラフェンは、電子と可視光を透過することで知られている。このたび、N Koratkarらは、グラフェンは極めて薄いので、ぬれ性が原子間の長距離ファンデルワールス力に支配される表面の固有のぬれ挙動に対しても透過性があることを示した。Koratkarらは、グラフェンでコーティングした銅と金とシリコンの表面において水滴の接触角を測定し、接触角がグラフェンコーティング前の表面とほとんど変わらないことを見いだした。この現象は、グラフェンでコーティングしたガラスには見られなかった。ガラスのぬれ性は、相対的に短い距離の化学結合によって支配されるからだ。また、Koratkarらは、表面のグラフェンコーティング層を増やしていくと接触角がグラファイトに近くなっていくことも見いだした。 コンフォーマルなグラフェンコーティングのぬれ透過性は、電子物性とぬれ性が別々に調節されるような新しい応用を可能にするかもしれない。
doi:10.1038/nmat3228
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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