Research Press Release

動物学:チンパンジーはアンドロイドからのあくびがうつることがある

Scientific Reports

2025年6月6日

チンパンジー(Pan troglodytes)は、人間の表情を真似たアンドロイドからあくびが「うつる」ことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究は、チンパンジーがアンドロイドのあくびに反応してあくびをしたり横になったりすることを示しており、あくびが単に反射的な反応を引き起こすのではなく、休息への合図として働く可能性を示唆している。

伝染性のあくび(他の動物のあくびを見ると、その個体があくびをする)は、主に哺乳類と一部の魚類で観察される。あくびやその伝染性の進化的起源はまだ解明されていないが、人間を含むいくつかの動物は、他の種からのあくびがうつる。

Ramiro Joly-MascheroniとBeatriz Calvo-Merinoら(ロンドン大学シティ・セント・ジョージ校〔英国〕)は、人間の表情を再現できるアンドロイドの頭部を用いて、10歳から33歳の14頭のチンパンジーの反応を調査した。頭部には、あくびを含む顔の表情を生成する筋肉として機能する33個の回転モーターが搭載されており、1回の顔の動きは10秒間であった。各チンパンジーは、アンドロイドが「あくび」、「大きく口をあける(ゲイピング)」、および「平静(ニュートラル)」の表情を示す15分間のセッションを4回受けた。これらのセッションはカメラで録画され、各チンパンジーは横になっている時間の長さとともに、反応性を採点された。14頭のチンパンジーのうち8頭(57.1%)が、アンドロイドの「あくび」に反応して伝染性のあくびをし、また、同数がアンドロイドのあくびに反応して横になる行動をとり、一部は横になる前に寝具を集める様子も見られた。

著者らによると、これらの結果は、無生物モデルによる伝染性あくびが確認されたのは今回が初めてと考えられている。この反応の背後にあるメカニズムはまだ不明であり、今後の研究では、ロボットが行う他の行動が動物に伝染するかどうかを探ることができるだろう、と著者らは付け加えている。

Joly-Mascheroni, R., Forster, B., Llorente, M. et al. Chimpanzees yawn when observing an android yawn. Sci Rep 15, 18002 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-98639-z


 

doi:10.1038/s41598-025-98639-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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