生体医工学:AIペンが筆跡からパーキンソン病を検出
Nature Chemical Engineering
2025年6月3日
磁性インクを充填したペンは、パーキンソン病の早期発見に役立つかもしれないことを報告する論文が、Nature Chemical Engineering に掲載される。このデバイスにおけるニューラルネットワークを活用したデータ分析は、患者と非患者の筆跡の違いを識別でき、早期診断の可能性を拓くかもしれない。
パーキンソン病は、世界中で約1,000万人もの人が罹患していると推定され、アルツハイマー病に次ぐ最も一般的な神経変性疾患である。パーキンソン病はまた、世界で最も急速に増加している神経変性疾患であり、低・中所得国では、医療専門家の不足などにより診断件数が過小評価されていると考えられている。この病気の症状にはふるえが含まれるため、診断は通常、患者の運動機能の観察に基づいて行われる。しかし、この方法は客観的な基準が欠如しており、臨床医の偏見に依存する傾向がある。
Jun Chenら(カリフォルニア大学ロサンゼルス校〔米国〕)は、磁性インクを内蔵した特製ペンで手書きした筆跡サンプルからパーキンソン病を診断する手法を開発した。表面や空中での書き文字から磁気インクの運動を電気信号に変換し、人工知能の手法であるニューラルネットワーク(相互接続されたノードのネットワークを用いて複雑なパターンを学習し識別する手法)の支援により、著者らは、16人の小規模なコホートにおいて、パーキンソン病患者と非患者の筆跡を95%以上の精度で区別できることを示した。
この診断用のペンは、低コストで高精度、かつ広範に配布可能な新技術として、大規模な人口や資源が限られた地域におけるパーキンソン病の診断の向上に寄与するかもしれない。著者らは、今後の研究では患者サンプルを拡大し、パーキンソン病の進行段階を追跡するツールとしての可能性を調査すべきだと指摘している。
- Article
- Published: 02 June 2025
Chen, G., Tat, T., Zhou, Y. et al. Neural network-assisted personalized handwriting analysis for Parkinson’s disease diagnostics. Nat Chem Eng (2025). https://doi.org/10.1038/s44286-025-00219-5
doi:10.1038/s44286-025-00219-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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