天文学:AI の手法で星の合体をより迅速に検出
Nature
2025年3月6日
新しい機械学習アプローチにより、天文学者が連星中性子星の合体位置を特定する速度が向上するかもしれないことを報告する論文が、今週のNature に掲載される。このアプローチでは、中性子星の合体による重力波放射をアルゴリズムで研究し、信号が地球に到達してから合体を検出して位置を特定するのにかかる時間はわずか1秒である。このような星の合体の重力波の自動検出は、これらの宇宙の出来事に対する新たな洞察をもたらすかもしれない。
中性子星の連星合体による重力波信号は、地球上の検出器で捉えることができるが、星の組成や衝突時の状況を把握するには、迅速な追跡観測が必要である。従来の手法では、合体の後の重要な瞬間に望遠鏡を重力波源に向けるのに十分な速さでデータを評価することができない。機械学習に基づくアプローチは、分析を高速化できるが、信号の長さと複雑さに関連する課題により、合体位置の予測精度が低くなる。
Maximillian Daxらは、重力波の検出からわずか1秒で、2つの中性子星の合体を高精度で特徴づけ、位置を特定できる機械学習手法「DINGO-BNS」を発表した。このアルゴリズムは、以前のアルゴリズムよりも大幅に高速であるだけでなく、結果の精度も30%向上している。DINGO-BNSによって得られた詳細な情報は、高価な望遠鏡の観測時間を最も有効に活用できる天体現象を特定するために利用できると、著者らは指摘している。また、将来的には、この手法を他の種類の重力波源にも応用し、宇宙の理解を深めることができるかもしれないと示唆している。
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- Published: 05 March 2025
Dax, M., Green, S.R., Gair, J. et al. Real-time inference for binary neutron star mergers using machine learning. Nature 639, 49–53 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08593-z
doi:10.1038/s41586-025-08593-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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