惑星科学:火星に固体の内核が存在する可能性
Nature Communications
2025年2月26日
火星の中心に固体の内核が存在する可能性を示す地球化学的証拠を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
NASAのインサイト計画(InSight mission)のデータから、火星には液体の核があることが明らかになった。地球の核と同様に、火星の核は主に溶けた鉄金属で構成されていると予想されている。しかし、密度は低く、火星の核には硫黄などの軽い元素が大量に含まれていることが示唆されている。これまでは、火星の核の温度は固体の内核が結晶化するには高すぎる可能性が高いと考えられていたが、鉄硫化物が内核を形成する可能性については詳細に検討されていなかった。
Lianjie Manらは、火星の中心部の鉄硫化相の結晶構造と密度を特定するために、高圧高温実験室での実験を実施した。火星の中心部の温度が約1,960ケルビン(この領域の推定範囲内)以下に下がれば、鉄硫化相が結晶化し、固体の内核が形成される可能性があると著者らは示唆している。火星に固体の内核が実際に存在していることを確認するには、さらなる地球物理学的な測定が必要となる。しかし、この研究で発表された成果は、今日、あるいは火星がさらに冷却された後の近い将来に、火星に固体の内核が存在する可能性を裏付けるものである。
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- Published: 25 February 2025
Man, L., Li, X., Boffa Ballaran, T. et al. The structure and stability of Fe4+xS3 and its potential to form a Martian inner core. Nat Commun 16, 1710 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-56220-2
doi:10.1038/s41467-025-56220-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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