健康科学:イカに着想を得た針を使わない薬物送達システム
Nature
2024年11月21日
イカやコウイカなどの頭足類のインクジェット推進機構にヒントを得た薬物送達(ドラッグデリバリー)システムが、動物モデルで実証され、今週のNature に掲載される。このアプローチは、ある種の薬やワクチンの投与に針を必要とせず、治療のアドヒアランス(遵守)を向上させる可能性がある。
注射針は、インスリンやワクチン、およびモノクローナル抗体などの高分子を含む多くの治療薬の投与に不可欠となっている。皮膚のすぐ下に投与できる治療薬もあるが、特定の臓器に直接注射する必要があるものもあり、内視鏡針や、最近開発された経口摂取が可能なロボット針装置も必要となる。しかし、針の使用には、患者の不快感や廃棄の問題など、多くの課題が伴う。
針に代わるものを求めて、Giovanni Traversoらは頭足類に見られる噴射作用を模倣したマイクロジェット送達システムを開発した。著者らの装置は、大型動物モデルで実証されたように、高圧液体ジェットを用いて、インスリンなどの薬物を消化管組織に直接送達することができる。このシステムは、皮下投与に匹敵するレベルで治療薬の標的送達を達成し、テザー(内視鏡的)および経口摂取が可能なデバイスに使用することができる。
著者らは、噴射メカニズムの改良とヒトでの安全性と有効性の試験にはさらなる研究が必要であるとしている。しかし、著者らは、このシステムが、テザーおよび経口摂取可能な薬物送達システムを改善する可能性があることを示唆している。
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- Published: 20 November 2024
Arrick, G., Sticker, D., Ghazal, A. et al. Cephalopod-inspired jetting devices for gastrointestinal drug delivery. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08202-5
doi:10.1038/s41586-024-08202-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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