気候変動:将来の干ばつは予想以上に長期化する可能性
Nature
2024年9月19日
今世紀末までに干ばつの平均的な最長期間は、気候モデルがこれまで予測していたよりも10日間長くなる可能性があることを報告する論文が、Natureに掲載される。この研究結果は、今後数十年間の干ばつが社会や生態系にもたらす危険性が、予想以上に大きくなるかもしれないことを示唆している。
気候モデルは、世界の多くの地域で極端な干ばつが増加すると予測しているが、不確実性があるため、干ばつによる環境への影響を最小限に抑えるための効果的な適応戦略を実施することは困難である。Irina PetrovaとDiego Mirallesらは、中程度排出シナリオと高排出シナリオ(IPCCのSSP2-4.5とSSP5-8.5シナリオ。IPCC = Intergovernmental Panel on Climate Change〔国連気候変動に関する政府間パネル〕、SSP = Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)の両方において、さまざまな気候モデルによる干ばつ予測における潜在的な偏りを調査した。そして、1998年から2018年までの間で、毎年最も長く連続して乾燥した日数(年間の最長干天期間として知られている)の過去の観測値を用いて、これらの予測を調整した。
著者らは、調整されたモデルによって今世紀末までに予測される年間の最長干天期間の増加は、両排出シナリオの下で、調整されていないモデルによって予測される増加よりも、平均して42–44%高くなる可能性があると見積もっている。このことは、2080年から2100年にかけて、世界の年間の最長干天期間の平均が、これまでの予想より10日長くなる可能性を示している。著者らはまた、北米、アフリカ南部、およびマダガスカルにおいて、調整モデルによって予測された年間の最長干天期間の増加は、調整されていないモデルによって予測された期間の約2倍であることも明らかにした。
しかし、中央と東アジアでは、両方の排出シナリオの下で、調整モデルによって予測された年間の最長干天期間の将来の減少は、調整されていないモデルによって予測されたものより3倍近く大きくなる可能性がある。この知見は、一部の地域で降雨や洪水の頻度が増加するリスクが高まることを示唆している。
この知見は、世界中の干ばつリスクを再評価する必要性を示し、気候モデルの予測の信頼性を高めるために、気候モデルの既存のバイアスを修正することの重要性を明らかにしている。
Petrova, I.Y., Miralles, D.G., Brient, F. et al. Observation-constrained projections reveal longer-than-expected dry spells. Nature 633, 594–600 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07887-y
doi:10.1038/s41586-024-07887-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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