バイオメカニクス:カブトムシの翅のメカニズムがロボットデザインにインスピレーションを与える
Nature
2024年8月1日
カブトムシがどのように後翅(こうし)を展開と収納するのかを分析したところ、そのプロセスは受動的であり、筋肉活動を必要としないことがわかった。今週のNatureに報告されるこの発見は、飛行するマイクロマシンの設計改善に役立つ可能性がある。
空を飛ぶ昆虫の中で、カブトムシは最も複雑な翅(はね)の仕組みを持っており、エリトラと呼ばれる一対の硬い前翅(ぜんし)と、繊細な膜状の後翅という2組の翅を持つ。翅の折り紙のようなひだについては広範な研究があるが、後翅をどのように展開および収納するかについてはほとんど知られていない。これまでの研究では、甲虫の後翅の付け根の動きは胸部の筋肉によって駆動されると理論づけられているが、この理論を裏づける実験的証拠は不足している。
Hoang-Vu Phanらは、高速カメラと動的に類似した飛行ロボットを組み合わせて、これまで解明されていなかったこの研究領域に取り組んだ。著者らは、カブトムシが翅を展開したり収納したりする際に、エリトラを含む受動的なメカニズムを用いることを観察した。翅の展開は2段階のプロセスで、エリトラを上げるとバネのように後翅が部分的に解放され、次に羽ばたき運動によって後翅を上げた飛行姿勢にする。著者らはまた、カブトムシがエリトラを使うことで受動的に後翅を静止時の姿勢まで下げることも発見している。
この観察からヒントを得た著者らは、カブトムシの翅の受動的な展開と収納を模倣したマイクロロボットを作った。このマイクロロボットは、離陸と飛行の維持に成功している。この発見は、甲虫の受動的な後翅のプロセスを羽ばたきするロボットの設計に応用することで、限られたスペースや散らかったスペースで動作する必要がある小型ロボットの能力を向上させることができることを示唆している。
Phan, HV., Park, H.C. & Floreano, D. Passive wing deployment and retraction in beetles and flapping microrobots. Nature (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07755-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change