微生物学:自閉症スペクトラム障害は子どもの腸内細菌叢の変化と関連する
Nature Microbiology
2024年7月9日
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)にある特定の細菌および非細菌成分とその機能が、男女の子どもにおける自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)に寄与している可能性があることを報告する論文が、Nature Microbiology に掲載される。今回の研究は、これらの成分の特定のサブセットが、将来の診断やメカニズムを解明する研究に役立つ可能性を示唆している。
腸内マイクロバイオームとASDの関係は、以前から研究の対象になっていたが、これまでの研究は、神経学的定型の個人と比較したASDのある個人の腸内細菌組成の変化に焦点を当てたものであった。古細菌、真菌、ウイルスなどの腸内細菌叢の他の腸内微生物や、腸内細菌叢の機能(または存在する遺伝子)が変化しているかどうかは不明である。
Siew Ngらは、中国の5つのコホートから得られた、ASDの有無にかかわらず、1~13歳の1,627人の男性および女性(24.4%)の子どもの糞便サンプルに対して、メタゲノム解析を行った。著者らは、これらのサンプルを、食事、薬物療法、および併存疾患などの追加因子に関するデータとともに分析した。これらの交絡因子を制御した結果、著者らは、ASDのある子どもで14種類の古細菌、51種類の細菌、7種類の真菌、18種類のウイルス、27種類の微生物遺伝子、および12種類の代謝経路が変化しているのを同定した。Ngらは、機械学習を用いて、31種類の微生物と機能のパネルに基づくモデルを作成した。このモデルは、単一の界(細菌や古細菌など)の腸内マイクロバイオームマーカーのパネルと比較して、ASDのある男女を識別する診断精度が高かった。
著者らは、これらの31のマーカーが複数のコホートにわたって再現性があることから、臨床診断に用いられる可能性を示唆している。また、これらの知見は、腸内細菌叢とASDに関する今後の仮説駆動型メカニズム解明の研究にも役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41564-024-01739-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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